(1)剣道の国際普及活動
・報告者は、イタリア剣道連盟の招へいにより1990年4月から7月までの3ヶ月間
また全日本剣道連盟派遣要請並びにドイツ剣道連盟招へいにより1994年11月か
ら翌年5月までの7ヶ月間、剣道国際普及活動及び技術指導の機会を得た。その後も
年1、2回のイタリア及びドイツ訪問、あるいは両国剣道家達の会津訪問の機会を設
け、両国と日本との剣道を通じての交流を続けてきた。
(2)国際普及の難しさ、その背景について
・剣道を日本の伝統的運動文化の一つと捉えたとき、その国際普及の困難さとは、単に
技術伝播の問題に留まることなく、日本とドイツ、イタリアとの文化、教育、歴史、
生活習慣の相違による問題点を含むものである。また、同じヨーロッパでもドイツと
イタリアの間の国民性の違いや、これまでの指導過程の影響によると思われる剣風の
差異が明らかに読みとれる。
(3)技術指導、実践法に見直しを
・こうした普及、指導活動の実践経験を通し、運動文化としての剣道の国際普及のあり
方、そして現在までの指導・実践法について、報告者は数多くの疑問や問題点に取り
組む必要を感じてきた。同時に、その教訓は日本国内での技術指導のあり方や指導・
実践法そのものを相対化する機会を与えるものである。国際普及が広がりを見せてい
る今こそ、日本剣道の指導・実践法再考の好機にあるとの実感を強くしている。
(4)「腰始動型打突法」と「出鼻技」への応用
・報告者は現在、こうした技術見直し論の一つの試みとして、「腰始動型打突法」とそ
の「出鼻技」への応用に取り組んでいる。本報告ではこの実践記録を紹介する。剣道
愛好者、実践者に限らず、一般の方々にも理解していただけるようビデオ機器などを
利用し、視覚的に目で追いながら解説したい。 |