手描き風案内図自動生成研究内容写真やコンピュータグラフィックスに代表される透視投影図は, 物体形状やその空間的配置など, 3次元情報を伝達する手段として我々の生活の様々なシーンで利用されてきています. しかしながら, 人の手により描かれる芸術絵画やイラストなどの絵は, 透視投影図とは異なるものとなっています. 例えば, 下図のような歯のカルテ図を考えてみましょう. この図では, 虫歯の部分がよく見えるようにそれぞれの歯が異なる視点を用いて描かれており, それらが全体としてつじつまが合うようにひとつの絵に統合されています. 結果として, このカルテ図には投影図に変形(デフォルメ)が加えられています. いま,このような透視投影のカテゴリに収まらない投影図表現を, 非透視投影と呼ぶことにしましょう. このような人の手により経験的に描かれる非透視投影図を, コンピュータを用いて生成することは, よりわかりやすい視覚情報表現を自動作成する道を開くことにあります. 本研究では,このような非透視投影図の自動生成を, 下のように物体の3次元形状そのもののを変形し, それに対し通常の透視投影を施すことで実現しました.
この非透視投影のモデルを用いて, 例えば箱根芦ノ湖地域の案内図の下絵を作成してみましょう. 左図が普通の透視投影図です. この場合, 手前の駒ヶ岳に対する構図は地平線がきれいに見えてよいのですが, 奥の芦ノ湖が隠されているのが難点です. そこで, 非透視投影のモデルを用いて, 駒ヶ岳を手前に移動します(中央上). また, 芦ノ湖はその湖岸線が分かりやすいように, 対応する視点を横から上方に移動してやります(中央下). このような, 2つの効果をあわせもつ非透視投影図を最終的に案内図の下絵として用いることができます(右図).
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