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地下鉄路線図に注釈を付ける際のメンタルマップの保持

International Journal of Art, Culture and Design Technologies, 2019


このウェブページは, 地下鉄路線図に注釈を付ける際のメンタルマップの保持 に関するプロジェクトの情報を提供するために準備されたものです



地下鉄路線図でのメンタルマップ保持


地下鉄路線図は, 旅行者が主要都市で利用可能な地下鉄路線の輸送ネットワークを探索するための共通メディアとして用いられています. このような路線図は, 鉄道網のつながりを読みやすくするために, 多くの場合図式的表現に変換されます. 最近の実用的技術の進歩により, 視覚的にもっともらしいかたちで, 地下鉄路線網の地理的レイアウトを自動的に図式化することができます. そのような図式的地下鉄路線図に, 駅名を適切に配置することも重要です. しかしこのような作業には,新たな技術的課題が生じます. その主な理由として, そのような図式的路線図の中心市街地は乗換駅が多くの地下鉄路線で混雑しているおり, 路線の終点駅周辺のまばらな郊外地域と比較すると, 駅名を配置するための十分な空間が見つけられないことが挙げられます. この問題は, しばしば混雑した中心市街地の駅周辺にラベルを配置する空間を手動で確保することにより解決が図られますが,これは通常長時間の試行錯誤の作業を伴います. 地下鉄路線図と駅名の配置の両方を同時に最適化することも考えられますが, その場合には多くの可能な配置の組み合わせ数え上げる必要があり, 現実的な解決策とはなり得ません.

本研究では, 図式的地下鉄路線図の元のレイアウトを最大限に尊重しながら, 駅名を自動的に配置するための漸進的な手法を開発しました. これを実現するために,地下鉄路線網により囲まれる領域の縦横比の変動を制限する制約を追加して,地下鉄路線図の基礎を成すメンタルマップを適切に保持するようにします. 提案手法の実行可能性は,実験結果とユーザスタディにおける評価により, 非公式のユーザー調査による評価とともに実験結果を提示することによって実証されました.


結果


図1は,リヨンの地下鉄路線図の列を示しています. 提案手法では,駅名ラベルをひとつずつ漸進的に, 中心市街地から郊外へと配置します. この結果は, 提案手法が元の路線方向を維持しながら, 地下鉄路線網を延長することにより, 駅名を配置する駅周辺に確保する空間を節約できることを示しています.

図1: リヨン地下鉄路線図のける漸進的なラベル配置


図2,3,4は, 導入された制約群が, 各主要都市の地下鉄路線図の基本的なメンタルマップを, どのように保持するかを示しています.

図2のミラノ地下鉄路線図の場合は, 漸進的注釈配置を直接適用すると路線図全体を過度に水平方向に引き延ばしてしまいますが, メンタルマップを保持する制約を適用すると, 図式的路線図により囲まれた領域の縦横比を再現することができます.


図2: ミラノ地下鉄路線図 (a) 元の図式的路線図. (b) 制約を伴わない注釈付き路線図. 路線網で囲まれた領域の縦横比の誤差に制約を与えたもの. (c) 50%以下.(d) 10%以下.


図3は,ウィーンの地下鉄路線図を示しています. この路線図では,単純に制約を課さず駅名を配置すると,中心市街地の路線図レイアウトが大きく歪んでしまいます. この望ましくないレイアウトの歪みは, 路線網によって囲まれた閉領域の縦横比を保持する制約のおかげで, 再び最適化されます.


図3: ウィーン地下鉄路線図 (a) 元の図式的路線図. (b) 制約を伴わない注釈付き路線図. 路線網で囲まれた領域の縦横比の誤差に制約を与えたもの. (c) 50%以下.(d) 10%以下.


レイアウトのもうひとつの大きな変形は, 図4に示すように駅名ラベルを配置した台北地下鉄路線図にも生じます. ここでは, 平行な路線間の空間を保持することができません. しかしこの場合でも, 基礎となるメンタルマップを保持するための定式化を用いれば, このような許容範囲を超える変形も回避できます.


図3: 台北地下鉄路線図 (a) 元の図式的路線図. (b) 制約を伴わない注釈付き路線図. 路線網で囲まれた領域の縦横比の誤差に制約を与えたもの. (c) 50%以下.(d) 10%以下.


図5は,漸進的注釈付においてどのようにメンタルマップを保持するかを示すデモビデオを提供する.


図5: 漸進的注釈付においてどのようにメンタルマップを保持するかを示す動画.



ユーザスタディ


メンタルマップを保持するために提案された定式化の実行可能性を評価するに, 54人の参加者を募集して, ユーザースタディを実施しました. 参加者は, 標準視力または矯正視力があるが, 視覚化研究の基礎に特に精通していなくともよいとしました. 参加者は, 地下鉄路線図の元の図式的レイアウトに最も似ているものを, 駅名を配置した3つの路線図を比較し選択するよう依頼されました. ここで,駅名付きの3つの路線図とは, 路線図で囲まれた領域の縦横比を維持するための(A)制約がないもの, (B)縦横比許容誤差率が50%以下の制約を課したもの, (C)縦横比許容誤差率が10%以下の制約を課したもの, に対応します. 表1は, ユーザースタディの結果を示しています. 結果によると, 参加者は, ミラノ,ウィーン,台北の地下鉄路線図において, 新たに導入した制約で最適化された駅名付き路線図レイアウトを選びました. 特に, ミラノと台北の地下鉄路線図の場合は, 中心市街地の閉領域の縦横比が厳密に保持されている結果を選んでいます. しかしながら, ウィーンの路線図の場合は, 異なる許容誤差比による制約で生成された路線図を区別しませんでした. これはおそらく, ふたつの駅名付き路線図の違いが小さく, より厳しい制約によって閉領域が過度に大きくなっている場合があるためと考えられます.


都市名 (A) 制約なし (B) 縦横比誤差50%以下 (C) 縦横比誤差10%以下
ミラン 9 10 35
ウィーン 1 45 7
台北 9 13 32

Paper & Video

Shigeo Takahashi, Ken Maruyama, Takamasa Kawagoe, Hsiang-Yun Wu, Kazuo Misue, and Masatoshi Arikawa,   Mental Map Preservation for Progressively Labeling Railway Networks,   International Journal of Art, Culture and Design Technologies, Vol. 8, No. 1, pp. 31-50, 2019.   [PDF], [DOI: 10.4018/IJACDT.2019010103].



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