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最適視点計算を用いた非透視投影図の自動生成

研究内容

芸術絵画において, 歪んだ投影図を描くことは一般的に行われており, 特にキュービズムと呼ばれる流れでは, その傾向が顕著に現れている. ここでは, 対象シーンに含まれるオブジェクトに異なる最適視点を割り当て, その個々のオブジェクトの投影図をシーン全体で滑らかに補間することで, 絵全体の整合性を保つ作業が一般的に行われる. キュービズムにおいても, 図1の左に見られるように, 初期はオブジェクトごとに与えられた視点位置をシーン全体において滑らかに変化させることで, 投影図の歪みを非常に小さく抑えている. ところがキュービズム後期になると, 図1の右に見られるように, オブジェクトごとに与えられた視点位置による投影図を, 貼紙のように貼り付けて, 視点位置の変化が不連続なまま絵画を描いている.

small equal .... large
Cezanne's "Still life with Oranges and Apples" Picasso's "La desserte" Picasso's "Femme nue accroupie sur fond vert"
図1: キュビズムの絵画の変遷. 初期のキュビズムではオブジェクトごとに異なる視点による見えは滑らかに補間されているが, 後期のキュビズムでは見えの違いがはっきり不連続に描かれるようになっている.

本研究では,このキュビズムに見られる絵画の描き方をモデル化することで, 歪んだ絵の自動生成を実現し, キュビズムに見られる絵の特徴の歴史的な変化をシミュレーションした. 具体的には, シーンに含まれるそれぞれのオブジェクトの最適視点を図2の上にあるように計算し, その視点のシーン全体の変化の滑らかさを制御することで, いろいろな歪みを持つ投影図を生成することで, キュビズムの初期から中期くらいまでの絵画の歪みを実現した.

water pod wide bowl flower pod foot dish mug cup fruit dish
trapesoid
nonsmooth smooth perspective
図2: シーンに含まれる6つのオブジェクトの最適視点の計算(上). それぞれのオブジェクトをほとんど視点の補間なしにひとつの投影図に合成したもの(左下). 視点をシーン全体で滑らかに補間した投影図(中下). 比較のための通常の透視投影図(右下).

図3は,実際に各オブジェクトの与えられている視点を, いろいろな滑らかさで補間して, 全体のシーンの歪みを制御した事例である. 我々の手法では, ひとつのパラメータ gamma でその滑らかさを制御することができ, gamma が大きくなればなるほど視点が滑らかになり透視投影図に近づいていく.

gamma 03 gamma 07 gamma 10
(a) gamma = 0.3 (b) gamma = 0.7 (c) gamma = 1.0
gamma 12 gamma 20 gamma perspective
(d) gamma = 1.2 (e) gamma = 2.0 (f) 透視投影図
図3: 様々な滑らかさによる視点の補間と, 全体の投影図の歪みの事例.

さらに,このような投影図の歪みは, 我々のシーンにおける視覚注意の向け方にも大きな影響を与える. 図4は, 図3のそれぞれの投影図において, どこに視覚注意がどのくらいの割合で集まるかを, 注視点計測を用いて測定した結果である. 図4の左が, 指定した特徴領域(Area of interest)であり, 図4の右が, そのそれぞれの特徴領域をどれだけの時間見ていたかを示す棒グラフである. 例えば, この結果から, 手前にあるお皿(特徴領域 AOI2)にもっとも注目して欲しい場合には, (b) gamma = 0.7 によって生成される投影図の歪みがもっと効果的あることがわかる.

Area of Interest Statistics
図4: 投影図に設定した4つの特徴領域(左側)と,それぞれの特徴領域が注目された時間を示す棒グラフ(右側).

この研究は,複雑理工学専攻の岡田真人教授と真塩海里くんと,当研究室との共同研究の成果です.

参考文献

  • 真塩 海里, 吉田 謙一, 高橋 成雄, 岡田 真人: 「最適視点計算を用いた非透視投影図の自動生成」 情報処理学会 グラフィクスとCAD研究会 研究報告 2009-CG-137-03, October, 2009.
  • 真塩 海里, 吉田 謙一, 高橋 成雄, 岡田 真人: 「最適視点計算を用いた非透視投影図の自動生成」 画像電子学会誌, Vol. 39, No. 4, pp. 359-368, 2010.
  • Kairi Mashio, Kenichi Yoshida, Shigeo Takahashi, and Masato Okada: "Automatic Blending of Multiple Perspective Views for Aesthetic Composition," in Proceedings of the 10th International Symposium on Smart Graphics (Smart Graphics 2010), (Springer Lecture Notes in Computer Science, Vol. 6133), (at Banff, Canada), pp. 220-231, 2010.   [PDF], [DOI]