ボリュームデータの位相解析と可視化研究内容CTやMRIなどの医療計測機器から得られる3次元画像や, シミュレーションなどで得られる電荷や密度の空間分布は, すべてボリュームデータと呼ばれる3次元空間の値を, 格子状にサンプルしたデータとして表現されます. このようなボリュームデータを分かりやすく可視化するためには, 空間をサンプルされた数値を, いかに色や不透明度などの光学的な特性に写像し画像に変換するかにかかってきます. このようなサンプルされた数値から色や不透明度への写像は, 伝達関数と呼ばれ, これを対象データの特徴を考慮にいれて上手に設計することが, データの可視化における重要な課題となります. 本研究では, ボリュームデータの位相的な特徴を効果的に追跡することで, この伝達関数の設計を効果的に行う手法を開発しています. 例えば,下図のように地形の標高データがあって, その等値面が高さに関してどのように変化するかを追跡しましょう. すると等高線は, 頂上で新しく生じ,谷底で消滅,さらに峠では分岐や併合が起こります. このような等値面の変化は, 頂点・谷底・峠などの臨界点とそれを線で結ぶ骨格木と呼ばれるネットワークとして表現できます. これを,1次元高次のものに拡張すると, ボリュームデータ内における等値面の遷移を表す骨格木が構築できます.
こうして抽出された骨格木を参照し, 臨界点に対応する部分を強調することで, ボリュームデータの可視化結果を大きく向上させることができます. 例えば, 以下は陽子と水素原子衝突のシミュレーションデータですが, 臨界点が存在する数値において色や不透明度に強調効果を加えることで, 下図のように陽子と水素原子の衝突直後に現れる, エネルギーの移動を分かりやすく可視化することができるようになります.
本研究の内容を記載した論文が, Elsevierから, Most cited paper award for Graphical Models 2004-2006 を受賞しました. 参考文献
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