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パソコン甲子園の本選に参加された皆さんのご奮闘おめでとうございます。
私はどちらかというとCG動画が専門なので少し方向性は違うかなとも思いますが、これからの方向性としてはいずれ合体していくと思うので、その点についてお話ししたいと思います。
皆さんが制作したCGと我々が作る映像は基本的には同じものですが、皆さんの作品には平面的な印象を受けました。人間が手で描くものは感情を込めた感情線であり、色についても感情的な彩色を行います。しかし、CGで描く線と色は感情を伴わない冷たい印象の画面ができあがる場合が多く、そのせいで平面的に見えてしまうからだと思います。

今日、演題に「時間」という言葉を入れたことには意味があります。時間には「締め切り」という問題があります。
私は「締め切りを守らん三大男」でしたが、手塚先生と石森先生が他界し私一人になってしまいました。
皆さんがもし、この先仕事として作品制作にトライするのであれば、どれだけの時間で何ができるかということを身につけていかなければ、プロフェッショナルの仕事としてする上では非常に苦労することになると思います。
また、我々が作品を制作する場合は、台本や絵コンテ、美術・装飾・デザイン画などが全て揃ったうえで制作します。制作するときも台詞に合わせた口パクや表情、秒割りまで台本や絵コンテどおりにきちんと制作するなど最初から約束事があります。
しかし、皆さんの作品などを観ると、自分一人の責任で自由に描くことが可能になってきたなと思います。
ただ、問題は画力です。デッサン能力や構成能力が身に付いていないと、紙に描くのと同じで自由に描くことは不可能です。まずそこを学んだ上で仕事を進めていかないとプロフェッショナルになることは不可能です。
また、作品を制作するうえでは、専門的な知識やそれに付帯する物語の構成上の参考資料など、非常に広範囲な知識を要求されます。一つのジャンルで作品を制作する場合であっても、そのジャンルに関する知識の集積は相当なものが必要になります。嫌なものは嫌でいい、自分の好きなものや楽しいものに偏った知識でもいいので、その知識を使ってキーボードを前にして奮戦すればうまくいくはずです。自分の方向性を確実に把握し、その方向性に沿って自分の進路を決めていくことが必要です。

昔は付けペンで絵を描いていて、当時も付けペンを使えない少年がいました。それと同じで、パソコンを自由に操って絵を描き文章を作れるということ、さらには絵を動かせるということは、ある程度のキャリアと蓄積が必要になってきます。そこに時間というものが必要になってきます。
若い皆さんはまだ意識していないとは思いますが、皆さんは時間という宝物を目の前に置いた楽園に住んでいます。時間という無限大の可能性を秘めた宝物が皆さんの前に広がっているのです。
我々の世代になると、もう地平線が見え、残り時間を考えはじめます。
残り時間を考えることのない高校生の皆さんは、人生のなかでの理想郷「我が青春のアルカディア」のまっただ中に住んでいるわけです。その時間をどうか大切に、時間という宝物の中で自分の夢を追いかけてください。
そして、目標を誤らないよう自分の最も得意とするところに向かって前進してほしいと思います。

また、作品を制作するうえでは、楽しみながら作ることが一番大事です。楽しくなければ絶対にうまくいかないし長続きしません。
生涯の仕事として作品制作に賭けたいのであれば、自分の楽しいジャンルを楽しいように展開できる実力を培えば、人生は非常に楽しいと思います。

今日の作品を観ていて気が付きましたが、実体験に伴った作品と架空の作品では大差がついています。自分自身が体験したものを描くことが画家の基本的なことです。自分で行ったり見たり触ったり食べたり殴られたりのいろんな経験が全て参考資料ですので、それらの表現が可能になるのです。

皆さんは若いので可能性は無限大にあります。時間は夢を裏切りません。そのかわり夢も時間を裏切ってはなりません。皆さんにとっては無限大の時間の中で腕を磨いて、自分だけにしかできないことを身につけてください。


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