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演題:「不遜な挑戦 -
コンピュータはプロ棋士に勝てるか」
今年は情報処理学会の50周年にあたり、ちょうどタイミングよくイベントが行われました。10月11日に、トッププロ棋士の女流王将の清水市代さんと、「あから2010」というコンピュータ将棋が対戦することになったのです。それにあたっては、情報処理学会の会長より、日本将棋連盟に挑戦状が投げかけられたところから始まりました。
これを受けて日本将棋連盟から、ご返事をいただきました。
その中で“不遜な”という言葉が使われていましたので、それをキーワードにして今回の講演の題目は、「不遜な挑戦 - コンピュータはプロ棋士に勝てるか」とさせていただきました。
さて、「あから2010」がどういったシステムなのかというと、数百台のコンピュータをつなげた特別な「クラスター」で、コンピュータ将棋の選手権でこの2、3年トップ争いをしている、「激指」、「GPS将棋」、「Bonanza」、「YSS」という4つのプログラムが高速計算した結果をひとつに絞って、次の指し手を持ち時間以内に決めるシステムになっています。対局結果はホームページなどで見ることができますが、86手目に女流王将が投了し、コンピュータ将棋の「あから2010」が勝ったのでした。
コンピュータ将棋の歴史を振り返りますと、将棋ではなくチェスの方になりますが、1950年代にアメリカでは当時とても高価だったコンピュータを使ったチェスがすでに始まっています。そして、1997年にはIBMのスーパーコンピュータのチェスのプログラムが、当時のワールドチャンピオンを破っています。
日本では、1970年代後半にコンピュータ将棋への取り組みがようやく始まり、2000年以降になってから、大学間で強いコンピュータ将棋のプログラムを制作する競争が始まりました。現在のコンピュータの性能の伸び方を考えると、2015年には日本の将棋界のトップである棋聖に、コンピュータが勝つ可能性があると言われています。
今から5年後の2015年は、選手の皆さんが大学を卒業している頃です。皆さんは、現在までに完成されたプログラムを引き継ぎ、さらに素晴らしいアイディアを取り入れて、コンピュータのレベルを上げていくことができる本当の意味での選手になれるわけです。コンピュータ将棋の中身は、特定のパターン・問題に特化しているものですが、実際の開発では、情報科学とプログラミングに関してのセンスと力量が問われます。そこにぜひ挑戦してほしいと思います。
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