この章では、同時に複数の音を鳴らすための記述について説明します。
複数の音符を角括弧 ([ と ]) で囲むとそれらを構成音とする和音を演奏する意味になります。音の高さの低い音符から書いても高い方から書いても同じ和音になりますが、低い方から書くことを推奨しています。角括弧も波括弧と同様、その前に構成音全体に対するオクターブ指定 (^および _) 、その後に音価指定などを置くことができます。
[ceg] [ceg^c]~ ^[ce^c] [_E E B ^D# ^G#]**

次の譜例のように、連続する和音において、一部の音がタイで結ばれている場合があると思います。

このような場合の記述法には2つあって、1つは下のように |Tie() と |EndTie() を用いる方法です。タイの開始となる音符に |Tie()、終了となる音符に |EndTie()をそれぞれ後置します。これらは他の章で述べるエフェクタというものの一種ですが、ここでは単にタイに関する指示と考えてください。
[c f|Tie() a] [d f|EndTie() b]
同じ高さの3つ以上の音がタイで結ばれている場合は、中間の音に対して|EndTie()|Tie() のように2つの指示を両方書きます。
一部にタイを含む和音のもう1つの記述法は、多声の記述に置き換えて表現する方法で、これについては下で説明します。
{ と } で囲まれた音楽フレーズ、もしくは単独の音符を、複数並べて角括弧 ([ と ]) で囲むと、それらを同時に演奏するという意味になり、多声の音楽を表現することができます。上で述べた和音の記述は、これの特殊な形にすぎません。
[c** {efgf}] [{c~d~} {ef~g}]

上の例では、2対の角括弧が使われていて、最初の小節では単独の音符と{ と } で囲まれたフレーズが、次の小節では2つのフレーズが同時に演奏されます。
先ほどの一部にタイを含む和音の例は、多声の表現を使って[{cd} f~ {ab}] あるいは [f~ {[ca] [db]}] と記述することができます。
[ と ] で囲まれたブロックを演奏したときの長さは、その中の要素(音楽フレーズあるいは単独の音符)が持つ長さの最大値になります。したがって、下の例の場合、[ と ] で囲まれたブロックを演奏したときの長さはどちらも全音符相当になり、長さの足りないフレーズに対しては休符が補われます。
[c* {efgf}] [{c~d~} {ef~}]

要素となるフレーズの長さには特に制限はなく、曲全体を1対の角括弧で囲んで複数のパートからなる曲を記述することも可能です。しかし、あまり長いフレーズを用いると、フレーズ間の対応関係が分かりにくくなりますので、下の “バッハのメヌエット”(現在では C. Pezold の作品とされていますIMSLPのページ) のように1〜8小節程度の長さに区切って、それぞれを [ と ] で囲む方が良いでしょう。
[
{ ^D {G A B ^C}/ ^D G G ^E ^{C D E F#}/ ^G G G }
_{ [{G* A} B*. ^D*.] B~~ ^C~~ B~~ }
]
[
{ ^C {^D ^C B A}/ B {^C B A G}/ F# {G A B G}/ A~~ }
_{ A~~ G~~ ^D B G ^D {D ^C B A}/ }
]

区切った [ ] ブロックの間で継続して鳴っている音がある場合は、和音のときに紹介した |Tie() と |EndTie() を使って接続してください。下に、バッハ作曲インベンション第1番の第4,5小節での使用例を示します。
[
{L16 ^e^d^cba^cb^d ^cbagf+agb}
_{L8 ^cef+g ab^c~|Tie()}
]
[
{L8 ad^c.^d/ {bagf+egf+a}/}
_{L8 {^c|EndTie() def+gef+d}/ g_bcd}
]
