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誤差の分布

ある物理量の真の値x0であるとする。この量を同じ条件で数多く測定 する時、統計誤差はなく、偶然誤差のみが誤差の原因であるとすると、測 定値xは真の値x0のまわりにランダムに分布しており、xx0か ら離れるほど、その値が測定される確率は小さくなる筈である。確率論に よれば、xはガウス分布(正規分布ともいう)をしており、その分布関 数は、

f(x) = $\displaystyle \frac{1}{\sqrt{2\pi\sigma}}\exp{\left\{ \frac{-(x-x_0)^2}{2\sigma^2}\right\}}$ (1)


  
Figure 2: ガウス分布
\begin{figure}
\begin{center}
\leavevmode
\psbox[scale=0.6]{me-ex1-fig2.eps} \end{center}\end{figure}

と表され、図 2に示すようにx=x0(真の値)でピークを示す。 $\sigma$は標準偏差とよばれ、分布の広がりを表す量である。ある量を n回測定して得られた測定値を $x_1,x_2,\cdots,x_n$とすると、各測定 値に含まれる誤差はxi-x0であり、この誤差の二乗の平均を $\sigma^2$とすると、

\begin{eqnarray*}\sigma^2 &=& \sum \frac{(x_i-x_0)^2}{n}
\end{eqnarray*}


である。したがって、その平方根の$\sigma$は、
$\displaystyle \sigma$ = $\displaystyle \sqrt{\frac{\displaystyle\sum_{i=1}^n(x_i-x_0)^2}{n}}$ (2)

と計算される。関数f(x)のすそ野は、 $x=\pm\infty$まで続いているが、 図 2のように $x=x_0\pm\varepsilon$で狭まれる領域を考え、そ の面積が全面積の1/2になる場合、すなわち全データの1/2がその中に含ま れるように $\varepsilon$を選ぶと、

\begin{eqnarray*}\int^{x_0+\varepsilon}_{x_0-\varepsilon} f(x)dx &=&
\frac{1}{2}\int^\infty_{-\infty} f(x)dx
\end{eqnarray*}


から、
$\displaystyle \varepsilon$ = $\displaystyle 0.6745\sigma = 0.6745\sqrt{\frac{\displaystyle\sum_{i=1}^n(x_i-x_0)^2}{n}}$ (3)

となる。この値を確率誤差という。

しかしながら、我々はいくら実験を繰り返しても、真の値x0を知らな いと $\varepsilon$を計算することはできない。そこでn回の測定から推 測される最も確からしい値として平均値

$\displaystyle \bar{x}$ = $\displaystyle \sum \frac{x_i}{n}$ (4)

を考えてみる。まず、n回の測定を行なって平均値 $\overline{x_1}$を 求め、またn回の測定を行なって平均値 $\overline{x_2}$を求めると、 それらは必ずしも同じではない。すなわち、$\bar{x}$x0の周 りに分布している筈である。しかし、nが大きくなれば$\bar{x}$x0に近い筈で、分布の広がりは$\sigma$よりずっと狭いであろうと 考えられる。統計学によれば、この$\bar{x}$の標準偏差$\sigma_0$は、
$\displaystyle \sigma_0$ = $\displaystyle \sqrt{\frac{\displaystyle\sum_{i=1}^n(x_i-\bar{x})^2}{n(n-1)}}$ (5)

となる。先に求めた $\varepsilon$の表現で$\sigma$の代わりにこの $\sigma_0$を用いると、
$\displaystyle \varepsilon$ = $\displaystyle 0.6745\sqrt{\frac{\displaystyle\sum_{i=1}^n(x_i-\bar{x})^2}{n(n-1)}}$ (6)

となるが、これを平均値の確率誤差という。平均値はいくらでも詳しく計 算することができるが、それがどの桁まで信用できるか(有効数字)を知 るにはここに示した平均値の確率誤差を求めてみると良い。



Kenichi Kuroda
2000-06-23