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微分・積分回路の過渡応答

一般に、RC回路に電気信号を入力すると、回路のコンデンサの充放電(講 義で説明したように、指数関数的な増減変化)により出力波形は変化して くる。

RC回路に方形波を入力した場合の出力波形の変化は、回路の時定数すな わち「RC」の大きさと、入力方形波の繰り返し周期Tの大小関係によって 支配される。2.2.2の「$j\omega $を使ったおおまかな微分、積分 法」において述べたように、 $1\gg\vert j\omega RC\vert$の条件が満たされるとき、 RC回路は微分回路として動作する。

この大小関係はjをはずせば
$1/\omega =1/2\pi f\gg RC$となる。1/fは繰り返し周期Tに等しいので
$1\gg\vert j\omega RC\vert$の条件を書き換えれば

$\displaystyle 繰り返し周期T\gg 時定数RC$     (5)

という条件になる。

同様にして、積分回路の条件、すなわち $1\ll\vert j\omega RC\vert$の条件を書き 換えれば、

$\displaystyle 繰り返し周期T\ll 時定数RC$     (6)

という条件になる。

本実験においては時定数RCは一定にしてあるので、繰り返し周期Tす なわち方形波の周波数を変えることにより、TとRCの間の大小関係を変え ている。

RC回路に方形波を入力した場合、時定数RCとTの大小関係により、出力波 形がどのようになるかの例を以下に示す。

(1)微分回路の出力波形を図4に示す。

微分回路において、Tに対して時定数RCが非常に小さい場合には、充電が 非常に速く行なわれ、抵抗端子出力電圧の図に示すように、スパイク状に なる。結果としては、方形波を微分して得られた波形になっている。Tに 対して時定数RCが大きくなってくると、次第に充電がゆっくり行なわれる ようになり、究極的には入力波形と同じになる。

  
Figure 4: RCとTの大小関係による方形波の微分波形
\resizebox{10cm}{14cm}{\includegraphics{me-ex3-fig8a.eps}}

<注意>
RC微分回路においては抵抗端子電圧を 測定しているが、回路に一定の方形波電圧が掛かった瞬間には、コ ンデンサ両端の電圧はゼロ(コンデンサ充電には時間が掛か るため)である。したがってまず抵抗に全電圧が掛かり、 それから次第にコンデンサが充電してコンデンサ端子電圧が 指数関数的に増加する。その結果として抵抗端子電圧は 指数関数的に減少していく。 このことから抵抗端子電圧についてはその抵抗を通してのコンデ ンサの充電だけが関与していることがわかる。

(2)積分回路の出力波形を図5に示す。

積分回路の場合、Tに対して時定数RCが 非常に大きい場合には充放電に時間が掛かる。 したがって図5のようにコンデンサ端子出力波形は直線で近 似され、方形波を積分して得られた三角波になる。 Tに対して時定数RCが小さくなってくると、次第に充放電が速く行な われるようになり、究極的には入力波形と同じになる。


  
Figure 5: RCとTの大小関係による方形波の積分波形
\resizebox{10cm}{14cm}{\includegraphics{me-ex3-fig9.eps}}



Kenichi Kuroda
2000-06-24